魚屋スイソによるゲームミュージックコラム「うたうのをやめません」第4回です。
今回はさんからお題をいただきました。

二股がばれたときに流れるゲームミュージック

Mass Destruction - 目黒将司 - ペルソナ3

アトラスの人気RPG『ペルソナ』シリーズですが、3からは学校の仲間や街の住人たちとコミュニティを築き、各キャラクターのサブストーリーを進めつつペルソナ能力を高めるという新システムの採用により、特定の女性キャラクターとの恋愛要素を楽しめるようにもなりました。放課後や休日を共に過ごし、時折会話の中に出現する選択肢の回答次第でコミュニティランク、言い換えれば好感度が上昇していくというさながら恋愛ゲームのようなシステムです。攻略対象である女性キャラクターにはクラスメイトから上級生、部活のマネージャーに生徒会役員と、様々な個性を持つ美女・美少女揃いで、主人公は選り好みすることができるのです。もちろん浮気も二股も可能で、となると当然気まずい展開に遭遇することもあり、複数の女性に手を出していると連日屋上呼び出しなんてザラです。関係がリバースした状態で間違った言い訳をしようものなら最悪ブロークン状態に陥ってしまうことも。そうなるともう本来のRPGとしてのゲーム進行すらままならなくなってしまうほど。しかしより強力なペルソナを生み出すためには全てのキャラクターと仲良くなることが必要であり、問題はいかに修羅場を潜り抜けていくかと言っても過言ではないでしょう。そんな軋轢によるストレスを解消してくれるのがこの「Mass Destruction」という曲です。曲を聴いただけでゲームを知らない人は驚くかもしれませんが、実はこの曲、通常戦闘曲として作中で使用されていて、タルタロス(ダンジョン)の中でシャドウ(敵)と遭遇するとベイベベイベと軽快なイントロが流れ始めるのです。オシャレなファンクハウス系の楽曲ですが、タイトルを直訳すると大量破壊。その名の通り、日々の女性関係のしがらみ諸共、大量虐殺を決め込むことができるという、素敵なバトルテーマなのです。二股がばれようと、浮気に感づかれようと、いっそ吹っ切れてみるというのも一つの手ではないでしょうか。一斉攻撃まで持ち込めば後は軽快な演出とSEと共に戦闘終了を待つのみ。ただし、直接女性を相手にする場合は、背筋の凍りつくようなブフダイン(わたしのことが大事じゃないの?)、感電して何も言い返せなくなるようなジオダイン(どうして嘘を吐くの?)、大惨事が予想されるマハムドオン(相手の女も殺してやる)、最終手段であるメギドラオン(さよなら)での返り討ちには充分ご注意。

Battle In The Jungle - 日比野則彦 - METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER

初代『メタルギア』がMSXで発売されたのが1987年、小島秀夫監督によるプロデュースでその後もシリーズ化は続き、2012年には25周年を迎えました。主流のアクションゲームとは一線を画すステルスアクションというジャンルを確立させた『メタルギア』、プレイヤーは隠密潜入のエキスパートであるスネークとして敵地に乗り込み、ミッションをこなしていくという内容なのですが、多数の警備兵に対してこちらは単身、無闇に突っ込んで戦闘になれば勝ち目はありません。そのためこのゲームでは単純な戦闘力よりも、戦闘を避けて進むスキルに重点が置かれています。敵の死角を掻い潜り、電波障害を生じさせて監視カメラの機能を停止させ、時には変装し、そしてダンボールを被る、作戦を秘密裏に実行していくためには様々な状況に合わせた行動が必要となります。しかしそれでもバレるのがこのゲーム、敵に発見されると「!」の文字の表示と共に特有の効果音が鳴り、BGMも戦闘モード、警戒モードのものへと変わります。こうなってしまえばプレイヤーが取れる選択は逃げるか戦うかの二択ですが、当然ステルスゲームと銘打っている以上、見つかってしまうとまず死ぬように難易度調整されています。『MGS3』の舞台はジャングル、主人公スネークはミッションの進行と同時に、密林でのサバイバルを強いられ、自然に生息するヘビやワニ、時にはネズミやカエルまで食っていかねばなりません。さすがに日常的に爬虫類を食べる程厳しいサバイバル生活を送っている男性はそうそういないとは思いますが、日々の競争社会を生き抜くために、耐え忍ぶために、辛酸を嘗め苦虫を噛み潰す思いでいる方は大勢いると思います。そんな中ですら、いや、だからこそ、浮気や二股をするという猛者もいるわけですが、彼らは常に危険と隣り合わせという一歩間違えば死に直結する状況にいるため、スネークとはある意味非常にシンクロしやすいと言えるのではないでしょうか。なのでカモフラージュ率を上げて身を潜めることに関してはスペシャリストなはずですが、ゲームと同じく、バレるときはバレます。盛大にバレます。そしてその後の対応は、今度はゲームとは異なり、女性相手にCQC(近接戦闘術)を仕掛けたりグレネードボムやアサルトライフルをぶちかますわけにもいかず、この音楽が流れた以上、死を待つ他なりません。パラメディックなんていません。ライフゲージが0になって大佐や少佐の叫び声が聞こえる前に、大人しくMSXの電源を切って身を引くのが賢明でしょう。

TrueLastBoss - 並木学 - 怒首領蜂 大往生

常に人類に挑戦状を送り続けてきたケイブのSTG『怒首領蜂』シリーズからの一曲です。ゲームタイトルは『怒首領蜂』と書いて「どどんぱち」と読みます。『首領蜂』の続編として1997年にアーケードからスタートしたこのゲームは、弾幕系シューティングというジャンルを確立させ、『怒首領蜂 大往生』として一旦完結して尚『大復活』そして2012年には『最大往生』までリリースされるという根強い人気をもち、数々のシューターを魅了してきました。人間の限界を超えることを平気で要求してくるとの声も聞くケイブシューですが、この『大往生』も例に漏れず高難易度で、特にこの曲の流れる2周目のラスボス、緋蜂はシューティングゲーム史上最難関ともいわれ伝説になったほど。弾幕ゲーは本来、その絶え間なく降りかかる弾幕と弾幕のわずかな隙間をドット単位で調整し縫うようにして避けられるよう、向かってくる弾のスピードはややゆるやかなのが一般的なのですが、『怒首領蜂』では無慈悲なほどに速いのです。常軌を逸した数とスピード、その凄まじい破壊力たるや、男の不義を確信したときの女の猛攻に匹敵します。追い討ちに次ぐ追い討ちに対しこちらは残機1、当然ボムすらありません。「ああ」とか「うん」とか「いや」とか「その」とかの1wayショットのみで立ち向かうしかないのです。はじめに「死ぬがよい」と告げてくれることはむしろ優しさなのかもしれません。死ぬなら今のうちです。仮にもし人間をやめる才能と覚悟があったとしても、十中八九このスピードコアがあなたの葬送曲になることでしょう。洗濯機を棺桶に、ご愁傷様。

コラム「うたうのをやめません」ではテーマを常に募集しています。どなたでも、何度でも構いません。コメント、またはツイッター(@suiso)へのリプライ、お待ちしております。

うたうのをやめません 第4回

Posted on

2013年5月18日土曜日

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